【みんなで綴る百物語】~拾七の灯り~

企画
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あんた、

『親の心子知らず』

って言葉を知ってるかい?

 

“子供は親の情には

なかなか気付く事が

出来ない”

って意味なんだけどね、

 

今日はさ、

この言葉にぴったりな

話をしようと思うんだ。

 

ゾッとして少し悲しくなる__

とある親子の話さ。

 

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▼《拾七の灯り》:みつかる

 

あの頃の私は

いわゆる親不孝者で、

両親には本当に

心配を掛けてばかりでした。

 

私が幼い頃から

両親はとても厳しく、

私は常に親の機嫌を

伺いながら子供時代を

過ごしてきました。

 

そのせい……と言うのは

あんまりですが、

私が中学校に通い始め

親と離れている時間が

増えてくると__、

私の世界は一変しました。

 

新しい環境、

新しい交友関係……

全てが私に自由を

与えてくれている

そんな気持ちに

なったんです。

 

それまでずっと……

虫カゴで飼われる蝶のように

窮屈な生活を送ってきた私には、

目の前に広がる景色は

広過ぎました。

 

どの花も美しく見え

どの蜜も美味しく、

癖になるものでした。

 

そして、ごく自然に。

 

私は家に寄りつかなく

なりました。

 

__私が黙って

家を出たのは、

16歳の時です。

 

ベランダから

雨どいを伝って外に出て、

そのまま帰る事は

ありませんでした。

 

私はその後

同じ様に住む場所を失った

友人と二人街を出ました。

 

私達は、

そこから遠く離れた町にある…

ネオンが明るい路地の一角に佇む

ボロボロのアパートに

身を寄せました。

 

同時に私達は年齢をごまかして

夜の店で働き始めたんです。

 

時々食べ物にも困る様な

ギリギリの生活でしたし、

何度も怖い目にも遭いました。

 

でも私は、

いつもどこかそれを

楽しんでいられたんです。

 

今まで知る事のなかった

自由を前に、

私は両親の事など

思い出さなくなって

いきました。

 

ある日の深夜、

私は突然目を覚ましました。

 

深い眠りに落ちていた

はずなのに、

なぜか眠気はきれいさっぱり

吹き飛んでいました。

 

あまりにも鮮やかな目覚めに

私自身も少し驚いていたんですが、

ふと部屋と台所を仕切る

ガラス戸に目をやって、

更に驚きました。

 

ぼんやりとした
白い煙のようなモノが
ガラス戸を音も無く
すり抜けて行った

からです。

 

私はしばらく

息をする事も忘れて

固まってしまいました。

 

寝ぼけている訳じゃない__。

くっきりと冴えている頭が

そう伝えて来ているような気が

しました。

 

だからこそ、

煙がガラス戸を
すり抜けるはずがない

と言う事もはっきりと

分かっていました。

 

その日は結局……

よく眠れなかった様な記憶が

あります。

 

でも、

そんな夢みたいな出来事は

すぐに楽しい日々の中に

埋もれていきました。

 

私にとっては、

どうでもいい出来事

でしたから。

 

それからしばらく経った

ある日の明け方__。

 

私は友人に勢いよく

揺り動かされ

目を覚ましました。

 

私の腕をぎゅっと掴む

友人の手は震えていて、

普段は元気よく笑うその顔は

緊張しているように

大きく歪んでいました。

 

「どうしたの……?」

 

彼女のその表情に、

私も思わず身を固くしました。

 

友人は小さな声で、

内緒話を聞かせるように

私に言いました。

 

「さっき……
あんたのお母さんが、いた」

 

「ドアからスーって…
入ってきた。」

 

私達は、

誰にも居場所を告げては

いませんでした。

 

ドアの鍵もしまっていたし、

窓の鍵もかかっていました。

 

誰かが入って
来られるはずがない__。

ましてや、

私達の居場所を
知らないはずの母親が
この部屋にやって来る事など
あり得ない

 

__こんな夜中に。

 

そう考えた瞬間、

私の背中にも嫌な寒気が

走りました。

 

「寝ぼけてるでしょ、

夢でも見たんじゃない?」

 

私の口から、

思ってもない言葉が

溢れました。

 

彼女は頬に伝う涙もそのままに、

声を荒げて言い放ちました。

 

「違う!!
ホントに来てた!!
あんたのお母さんだったよ!!

煙みたいなモノと一緒に
ドアから入って来て、
あんたを見てた…。

ずっと…。

あんたの顔を見ながら
言ってたよ、

『見つけた、ここだ。
ここだ。

って……。」

 

その時、

私は身体全体の毛がゾワッと

立ち上がった様な感覚を

覚えました。

 

心臓が痛い位に

ドクドク動いていて、

ひどく苦しかった事を

覚えています。

 

__私がいつか見た、

ドアをすり抜けていった

煙の様なモノ__。

 

その正体が、

分かった瞬間でした。

 

母は__、

現実では説明できない様な

何かを辿って……

確かに私を見つけ出した。

 

私はそこでやっと、

そう確信出来ました。

 

そのあと私達は

逃げ出すように家を出て、

働いている店へと

足を向けました。

 

1分たりとも

そこに居たくなかった

からです。

店に入るとすぐに、

慌ただしそうに

ママが駆け寄って言いました。

 

「今さっき、

貴女のお母さんと警察が

あなたを訪ねて

ここに来ていたのよ。」

 

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▼結び

 

『母の想い』ってやつは、

本当に強くて怖いモンだよね。

 

母親はさ、

本当に命を懸けて

子を産むんだ。

 

『自分の分身』とも言える

命を産み落とすんだから、

そりゃあ心配にもなる

ってモンだよ。

 

生き霊だなんだと言われようが、

魂や命を削ってでも

見つけ出したい__、

そんな風に思っちまう

んだろうよ。

 

この女は、

結局この後も町を転々として

家には戻らなかったそうだよ。

 

でもさ__、

自分が母親になってみたら、

親の想いが痛いほど

分かっちまったんだってさ。

 

切ないよねぇ。

 

親と子は、

いつだって一方通行なんだ。

 

それに気付けた時には、

時間が無くなっている

もんなんだよ。

 

この女も、

何の因果か看取る事だけは

出来たそうだけど、

やっぱり色々と遺された想いを

抱え続けているそうだ。

 

あんたはさ、

ちゃんとゆっくり__

親を大事にしてあげるんだよ。

 

 

※画像引用元
サンサンさんによる写真ACからの写真

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