【みんなで綴る百物語】~拾参の灯り~

企画
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今回用意した話は

こう言っちゃあ

なんだけど……

少し退屈な話かも

知れないね。

 

なんでかって?

 

そりゃあ……、

あんたが好きな

背筋が寒くなるような

話じゃないからだよ。

 

今回話すのは、

あんたも一度は身を持って

感じた事があるはずの……

誰かの秘密を

知っちまった時の話さ。

 

他人の秘密を

知っちまった時って、

どうしてあんなに

ワクワクするんだろうね。

 

秘密ってのはさ、

知られちゃならない

って思う事程すぐに

知られちまうんだよね。

 

でもそんな時も、

あたし達の知らない誰かや

ナニかの力が

働いているのかも

知れないよ__?

 

信じないかも知れないけどね、

“秘密”ってやつは

意思を持ってるんだよ。

 

相手を選んで

念を送ったりするんだ。

 

『なぁ、覗いてみろよ。』

そんな風にさ__。

 

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▼《拾参の灯り》:旅支度

 

その日私は特別に、

いつもは母と父が寝ている

2階の部屋で横になって

いました。

 

微熱が出ているのをいい事に

我が家で唯一の

柔らかいベッドを

開放してもらっていた

んです。

 

そのベッド自体は

柔らかくて大きくて、

快適この上なかったんですが、

ひとつだけ困る事がありました。

 

それは“金縛り”です

 

そこで休んでいると、

私は必ず金縛りに

遭ってしまうんです。

 

私の方は金縛りだけ

だったんですが、

お父さんは金縛りの後に

誰かに足を引っ張られたり

する事もあったみたいです。

 

でも、

それでも私はそのベッドも

不思議な事が沢山起こる家自体も

嫌いではありませんでした。

 

いつだって、

ワクワクゾクゾクする様な……

不思議で怖くて楽しい発見が

ありましたから。

 

今日私がお話するのは、

この金縛りベッドが

ある部屋から見えた

誰にも言った事のない

秘密の出来事です。

 

その秘密の出来事の

舞台となったのは、

その部屋の窓から見える

不思議なアパートでした。

 

そのアパートは、

私達がこの家に

引っ越してくる前から

その場所にある3階建ての

コンクリート壁のアパート

なんですが……

 

いつ見ても人の姿がない

んです。

 

暗くなれば

電球の温かそうな明かりが

ちゃんと点くし、

 

少し前、

2階の部屋の玄関が

開け放たれていた時には、

奥にかかっていた暖簾も

見えました。

 

ちゃんと誰かが

住んでいるはずなのに、

いつ見ても

住んでいる人の姿は

全く目にする事が出来ない

んです。

 

とっても不思議だと

思いませんか?

 

私はいつも、

そのアパートが気になって

仕方がありませんでした。

 

ベッドの使用許可が出る度に、

静かにベッドの上に座り

熱に浮かされた頭から

布団をかぶって、

こっそりとそのアパートを

眺める__。

 

それがその頃の私の

とっておきの楽しみでした。

 

日が傾いてくると

どこからともなく、

ポツリポツリと

灯され始める部屋の明かりは、

温かい様でどこか不気味で……

 

まるで、

誰かの秘密を覗き見ている様な

小さな興奮を、

私に与えてくれたんです。

 

(一体、どんな人が

住んでいるんだろう……?)

 

裏口のないそのアパートに

いつの間にか帰り、

そしていつの間にか

出て行く人々は、

 

その頃の私の好奇心を

ねこそぎ攫っていってしまった

かの様でした。

 

そうしてその日もいつも通り

お決まりの体勢で

通りの向かいのアパートを

眺めようとした私でしたが……

 

その日はいつもとは違い

なんだかひどく身体が重くて、

外のアパートを眺める前に

眠りに落ちてしまったんです。

 

__井戸の底のように

暗くて深い眠りから

私を引きずり出したのは、

やっぱり“金縛り”でした。

 

私に起こる金縛りは、

いつも突然で……、

 

まるで自分が真空パックにでも

されてしまったかのように、

息苦しくなって

動けなくなるものなんです。

 

その金縛りが続いている間は

目を開ける事も出来ません。

 

真っ暗闇の中で

のしかかられる様な

重みに耐えながら

終わりを待つ。

 

それがいつもの金縛り

なんですが……、

 

その日だけは

違いました。

 

私は目を閉じている

はずなのに……、

私の目の前には

窓の向こうにあるはずの

アパートが映っていたんです。

 

(夢かな?

それとも私が寝ぼけてるだけで

これは現実?)

 

頭の中に突然浮かんだ

答えの出ない問いが

消えかかった時、

 

アパートの1階の……

一番右のドアが

ゆっくりと開き始めました。

 

私は意味を成さない考えを

とっとと放り出し、

ドアを見据えました。

 

(やっと……やっと
どんな人が住んでるのか

分かる__?)

 

私はもう、

自分の胸が張り裂けそうに

飛び跳ねているのを

痛いほど感じていました。

 

今まで願い続けていた事が

いよいよ実現する……。

その高揚に思わず手が震えます。

 

__その時、

視界の端から何かがゆっくりと

アパートに近付いてくる事に

気付きました。

 

私は咄嗟に、

音のする方へ視線を向けてみた

んですが……

 

本当に驚きました。

 

そこには、

今はもうほとんど

見かけなくなった

リアカーがあったんです。

 

かなり年季の入ったそれは

間延びした重い金属音を従えて、

ゆっくりとアパートの前に

差しかると……

気だるげに

動きを止めました。

 

__私が慌てて視線を戻した

その時にはもう、

アパートの玄関のドアは大きく

開け放たれていました。

 

ドアの2倍はあろうか
という程に大きな

の手によって。

 

あれは人じゃない。

その事は

すぐに分かりました。

 

でも、

その時の私には

アレが何なのか……、

それが分からなかったんです。

 

そうこうしているうちに、

住人達の手によって

部屋の中から次々と荷物が

運び出されていきます。

 

 

毛むくじゃらな
人には見えない歩くモノ

が、

 

つづらのように大きな

箱を持ち……

 

恐ろしく小さな
坊主頭の双子

は、

 

ふらふらしながら

細長い箱を運ぶ。

 

そしてその後ろには……

忙しなく喋る
ひどくせっかちな鳥

が続く__。

 

それはまさに、

物の怪達の旅支度

そんな光景でした。

 

皆でドタバタと

行ったり来たりしながら

家財道具をリアカーに

積みあげていくその様子は、

私にはなんだかとても

楽しそうに見えました。

 

私は言葉も無く息を潜め、

ただじっとその様子に

見入りました。

 

(これから

百鬼夜行が始まるんだ__。)

 

私はその時、

なぜだかそう確信したんです。

 

そして、

この先にあるであろう

未知の景色と旅路に

独り静かに

想いを馳せました。

 

私はそこでやっと

思い出します。

 

これは金縛りの最中に

見ている景色だった

という事を。

 

私は、

何としても自分自身の目で

この景色を見たい__。

そう強く思いました。

 

すると、

何かがそれを合図にした

かのように、

私の身体を自由にして

くれました。

 

布団を払いのけ

横の窓にしがみついた私は、

勢いよく窓を開け放ちました。

 

そこには__。

 

いつもと同じ、

静まり返ったアパートが

あるだけでした。

 

そこからは……

あの鳥の高くて騒がしい声も、

リアカーの面倒そうに

間延びした金属音も

聞こえてはきません。

 

いつもの不思議な景色が

横たわっていただけ__。

 

それからは一度も、

金縛りの中でさえ

あの日のような……、

“百鬼夜行の旅支度”

目にする事は

ありませんでした。

 

怪しくも楽しい

百鬼夜行を前に、

長い旅を思い……

 

その先の新天地を

夢見ながらする旅支度とは、

一体どんなもの

なんでしょうか__。

 

あれからずいぶん経った今も、

私は変わらずそれに

思いを馳せてしまう時が

あります。

 

ちなみに、

あの古いアパートは

今から十数年ほど前に

取り壊され、

跡地にはこぎれいな一軒家が

建てられています。

 

ですが今も、

その家にはあの頃と同じ

どこか虚ろな雰囲気が

漂っているんです。

 

__もしかしたら

あの家にはまだ……、

 

旅支度を終えていない

のんびり屋さんなナニかがいて、

人知れず出発のタイミングを

はかっているのかも

知れません。

 

いつかもう一度……

夢うつつの中でではなく

現実の世界で彼らに会う事が

出来たなら__、

 

その時は手を振って

見送ってあげたいと思います。

 

 

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▼結び

 

どうだい?

ちょいと退屈だったろう?

 

やっぱり、

人の秘密を覗くのは

楽しいモンだが

物の怪の秘密なんざ

暴いた所で楽しいもんじゃ

ないよねぇ。

 

言っちまえば……

こんな事はよくあるこった。

 

あんたもそれほど

驚きゃしないんじゃないか、

そんな風に思ってたが……、

 

やめとくれよ、

そんなに目を輝かせて

こっちを見ないでおくれ。

 

__あんたが

このテの話もいけるクチとはね。

 

ほんとにまぁ、

『好きモン』なこった__。

 

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サンサンさんによる写真ACからの写真

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