【みんなで綴る百物語】~十の灯り~

企画
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あんた……

ずいぶん楽しそうに

あの女の話を聞いてたねぇ。

 

いいんだよ、

今となっちゃぁ

あたしもあの女も

おんなじモンだ。

 

ろうそくの灯りが揺らめいて

形を変えるように、

あたしとあの女も

かわるがわるこの座敷に

姿を見せるだけだからね。

 

本当は

いがみ合う必要もない。

 

あんたがこのまま

この座敷に居りゃぁ__、

また姿を現す事も

あるだろうよ。

 

その時はさっきの話より

もっと面白い話を

聞かせてくれるはずさ。

 

さて、

今度はあたしの番だ。

 

今日はね、

ちょいと怪しくて

ジメッとした恐怖を

用意してきたよ。

 

__さぁ、

あたしの世界へ

帰っておいで__。

 

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▼《第十の灯り》:繋がる線

 

 

私達家族は、

ずいぶん前にかなり不気味な家に

住んでいた事があります。

 

その家は、

主人の会社に社宅として

借り上げられている

にもかかわらず、

なぜか人が居つかない

3LDK・築8年の戸建て住宅でした。

 

当然、

事故物件などではありません。

 

間取りも申し分なく、

車庫もついた文句なしの物件です。

 

でも……

長く住む人はいない。

 

ある日、

その家を持て余し始めた会社から

主人に直々に声がかかり、

 

私達は断り切れず

その家に引っ越す事に

なったんです。

 

その家に引っ越して

しばらくの間は、

これといった不可解な現象は

起こりませんでした。

 

ただ……

いくつか

(おかしいな…)

そう思う事が

増えていったんです。

 

そのひとつめは……

飼い始めた生き物が
すぐに死んでしまう事

 

家に連れ帰った後、

正しい飼育方法で育てても

みんな成長しないんです。

 

みんな死んでしまう__。

 

メダカや金魚…小動物達には

ずいぶん可哀想な事を

してしまいました。

 

もうひとつは……

水周りのトラブルが
絶えなかった事

 

引っ越したばかりなのに

水漏れや突然の詰まり

などが頻繁に起こり、

何度も清掃業者を呼ぶ羽目に

なりました。

 

更には知らないうちに

あちこちすぐに

カビだらけになり、

 

酷い時には

ナメクジやカタツムリが

壁を這い回っている……

なんて事もありました。

 

あり得ないと思いません?

 

私はその異様な環境が

本当に気持ち悪くて

仕方がありませんでした。

 

ほどなくして、

ちょっとした縁があり

我が家に保護猫を引き取る話が

舞い込んできたんです。

 

私としては

それまでの事があったので、

生き物を飼う事には

不安があったんですが……

 

何となく

【猫なら大丈夫だろう】

そんな気がしました。

 

事実、

この子は死ぬ事も

病に倒れる事も無く、

家での生活に溶け込んで

くれました。

 

ただ__。

 

その後から、

私達の周囲には

説明の出来ない様な事が

次々と起こり始めました。

 

まるで猫が……

“開けてはいけない扉のカギ”を

開けてしまったかのように__。

 

2階に居ると

金縛りに遭い__、

 

誰の気配もしないのに

玄関が開く音がしたり、

 

鈴の音色と共に

誰かが階段を上って来る

足音がしたり……。

 

家のあちこちに

生き物じゃない

“ナニかの気配”

感じるようになって

しまったんです。

 

当の猫も

2階に向かってよく鳴くわりに、

2階に連れて行くと

すぐに1階に戻っていったり、

 

夜はソワソワしては

娘の腕の中で

じっとしていたりと、

 

どことなく居心地悪そうに

している事が多くなって

いきました。

 

そして私は

おかしな音を聞く事の多い

2階で眠る事をやめ、

ひとりリビングで眠る様に

なったんです。

 

それからしばらくした夜、

娘が泣きそうな顔をして

私に声を掛けてきました。

 

「ママ……

私も下で寝る……。」

 

……私は念の為

その理由を尋ねましたが、

案の定…はっきりとは

答えてくれませんでした。

 

ただ

絞り出すように__。

 

“こわい”

そうこぼすのが

精一杯だったようでした。

 

私と娘はそれから毎晩、

寄り添う様に

眠りに就くように

なりました。

 

そしていつの間にか

猫もそこに加わり__。

 

2人と1匹は

身を縮めて夜を明かすのが

当たり前になりました。

 

あの頃は本当に

見えないけれど
そこに居るであろうナニか

がただただ恐ろしかった

んです。

 

でも、

そんな私達に反し

息子は至ってマイペース。

 

息子なりに

家に対する違和感を

感じてはいたらしいものの、

不思議と怯える様子は

見せませんでした。

 

「まま、

昨日の夜ね。

 

僕の枕もとで

知らないおじさんが

タバコ吸ってたよ。」

 

それは、

朝の忙しい時間に

突如降り落とされた

大きな爆弾でした。

 

いつまでもお皿の上に

残っている

息子の嫌いなトマトを

イライラしながら

片付けていた私は、

ピタッと動きを止めました。

 

(言っちゃったよ……。)

 

それは……

私と娘がなんとかして

心で否定していた存在を、

息子が純粋な気持ちで

肯定してしまった瞬間でした。

 

私も分かっていました、

生き物ではない

ナニかがいる事くらい。

 

だって充分過ぎるくらい

異常な物音を

聞いていましたから。

 

でも口にしたくなかった……。

 

口にしたら__、

認めてしまったら。

 

そのナニかの存在を

受け入れてしまう事になる様な

気がして……。

 

その日以降、

私はより色濃く気配を

感じるようになりました。

 

唯一安心して眠る事が

出来たはずの

リビングでですら

誰かがいるような……

暗く淀んだ気配を感じ、

 

背中がムズムズするような

寒気に似た感覚を

覚えてしまったんです。

 

それでも

子供達の学校の事が

ありましたから、

すぐに引っ越すなんて事は

出来ませんでした。

 

毎日……

背後や視界の端に居座る

ナニかの確かな気配に怯えながら、

自分を騙してやり過ごすしか

なかったんです。

 

そんな毎日を数日こなして

訪れた明け方__。

 

娘が突然、

勢いよく私を揺り動かし

起こしてきました。

 

ママ!!ママ!!
起きて!!
さっきママの頭のとこに
女の人が立ってた!!

 

娘は猫を抱いて泣きながら

そう何度も繰り返しました。

 

“身体が動かなかった”
“声も出せなかった”
“スカートが見えた”
“ママを見下ろしてた”

 

娘が細かく伝えてくれた

その光景を思い浮かべると、

じわっと汗が滲んで来るのが

分かりました。

 

そこでふと私の目に、

娘に強く抱き込められた

猫の姿が映りました。

 

(そう言えばこの子……

夜は絶対に

私に寄って来なかったな__。)

 

そんな事が頭をよぎった時、

私の中で何かが吹っ切れたのが

分かったんです。

 

いるモノはいる__。
かつて生きていた人が、
今もまだここに、《いる》

 

そう割りきってしまうと、

意外と納得出来ました。

 

確かに怖い事には

変わりないんですけど、

 

少なくとも

“分からないという恐怖”
からは開放された

 

それに気付く事が出来ただけでも

いくらか安心出来たんです。

 

それに、

思い返してみれば……

2階のおじさんも

リビングの女の人も、

私達に何か悪い事をした訳じゃ

なかったですから。

 

ただそこに居た

っていうだけです。

 

そこまで怖がる必要は

ないのかも……

とすら思えたんですよね。

 

__そこから私達家族は

何と……13年間もの間、

その家に住み続けました。

 

びっくりですよね、

少し経った頃には

不思議と色々な気配に

慣れてしまっていました。

 

……でも、

その家の周囲……多くの場所で

おかしなモノが目撃されていた

という事を知った時には

改めてゾッとしたものです。

 

でね、

もっと驚く事があるんです__。

 

窓に人影が見える
ペットが誰もいない場所に
向かって吠える

 

そんな現象を見た家を

繋いでいったら……

一本の線になった

んですよ。

 

私が思うに

__あれはきっと、

“霊道”

ってやつなんじゃないかと

思うんですよね。

 

……その線に沿って

事故物件が密集している

って事も、

その線が霊道である証拠

なんじゃないかなって__。

 

 

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▼結び

 

あんた今、

この女の事

ちょっと変わってる

って思っただろ。

 

怖い事を普通に……

淡々と話すこの女を、

普通じゃないって

思っただろ?

 

でもね、

こういうのが

意外と普通だったり

するんだよ。

 

『住めば都』

そんなことわざがあって、

 

『人間は忘れる生き物だ』

なんて言葉があるくらいだ。

 

人間、

染みついちまったと……

絶対に忘れられないと思った

不安や恐怖でさえ、

実は簡単に忘れちまえる。

 

それにさ、

ほんとに悪さをするヤツなんて

実は案外多くないだろ。

 

あんたの人生で

経験してきた事の中にも、

冷静に考えてみりゃぁ

そこまで怖い事じゃないな

……なんて事が

沢山あるはずなんだよ。

 

__恐怖ってモンは、

出所が分からないと

何倍にも膨れ上がる。

 

いいかい、

これから先……

本当に怖いと思った時は

それを掘り返して

根っこを探してみるんだ。

 

心じゃなくて

頭で考えてごらん。

 

そうすりゃ、

“ヤツら”とも

少しはうまく

付き合えるようになる

かも知れないよ__。

 

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※画像引用元
サンサンさんによる写真ACからの写真

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