【みんなで綴る百物語】~八の灯り~

企画
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心につく傷って

厄介だよね。

 

ふとした時にさ、

自然とその時の感情が

溢れて来て抑えられなく

なっちまうんだよね。

 

最近じゃあこれを

“トラウマ”

なんて洒落た言葉で

言ってるが……

 

本当はさ、

ずっと昔から

人間はそういう傷を抱えて

もがいたり苦しんだり

してきているんだよね。

 

いつの時代の人間も、

地震や山の噴火……

大きな事故なんかを

きっかけに、

 

終わらない恐怖

背負わされちまう。

 

その中でも一番厄介な

トラウマが__。

 

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▼《八の灯り》:遺る

 

あの時は本当に……

毎日気が狂いそうでした。

 

私は何もしていないのに……
どうして私なの?

 

そんな事ばかりが

頭を巡って、

ゆっくりと…でも確実に

正気を失ってきている自分が

可笑しく思えるほど、

壊れかけていました。

 

正確に言うと、

【壊されかけて】

いました__。

 

私は数年前に、

当時付き合っていた彼の

妹さんの引越しを

手伝った事があるんです。

 

今回引っ越す事になった

妹さんと私は、

当時とても仲が良く……

 

よく一緒に出掛けたり

何時間も話し込んだり……

大切な友人のような付き合いを

していました。

 

そんな彼女が

引っ越す事にしたのは、

千葉県のとあるアパートでした。

 

近くには広い公園があり、

少し車を走らせれば

大抵の物は手に入る……

何の不自由も感じられない

とても素敵な場所でした。

 

ただ……

彼女が住む事にした

アパートにだけは、

何となくゾッとするような

違和感を覚えました。

 

日中なのに…

大きな建物に

面している訳でも

ないのに……

 

妙に薄暗く感じた

んです。

 

正直な所……

私は彼女がなぜ

そのアパートを選んだのか__、

全く理解出来ませんでした。

 

でも、

本人はいたって普通で……

むしろ少し上機嫌なほど。

 

「いい所でしょ?」

 

なんて、

嬉しそうに笑っていた

くらいです。

 

私も彼も、

何となくそのアパートに

不穏な気配を感じながら、

 

手早く荷物を運び入れ

足りない物を買いに出掛けました。

 

ショッピングモールの中にある

大きなホームセンターや

可愛い雑貨屋さんを見て回り、

 

一通り買い物を済ませた私達は、

SNSで話題になっていた

カフェで楽しい時間を過ごし、

ドライブがてら少し遠まわりをして

あのアパートに帰りました。

 

時間は午前1時頃__。

 

順番にお風呂に入って

寝ようとしていた時、

私の携帯が手元にない事に

気付きました。

 

「……あれ?

携帯……」

 

その時すでに

バスルームに入ろうと

していた妹さんを置いて、

 

私と彼はアパートから

少し離れた場所にある

駐車場に戻りました。

 

「どうせ、
シートの溝にでも
落ちてるだろ」

「__あった。」

 

彼の言う通り、

私の携帯は車の助手席の

シートの横に落ちていました。

 

「だから毎回
『ケツのポケットに携帯入れるな』
って言ってるんだって。」

 

彼のそんなお小言を聞きながら、

私達が並んで公園の横を

通り過ぎようとした時__、

 

公園の方から

強い視線

を感じました。

 

さっき……

駐車場に行く時には

感じなかった視線__。

 

自然と私達の会話が

途切れました。

その雰囲気から、

彼も視線に気付いたようで……、

 

2人して恐る恐る

視線を感じる方に目をやると、

そこには
真っ黒い人が立っていた

んです。

 

暗いというのではない

“真っ黒”な人。

 

公園に少し入った辺りの

小道でただ立ったまま__、

こっちをじっと

見ていました。

 

直接目を見た訳でも、

目が合った訳でもない

んですが……

【見られている】

という事は、

なぜだかはっきり分かりました。

 

私と彼は

走ってアパートに戻り、

お互い早口で

状況を確認しながら

張り合って、

『怖くない』

『気のせいだ』

そう結論付けました。

 

その後シャワーを浴びた私は、

無性に下を向くのが怖くなって

ずっと天井を向いていました。

 

もちろんその日は

一睡も出来てません。

 

“真っ黒い人”が

頭の中でずっと私を見てきて、

目をつぶる事すら

ためらわれたくらいです。

 

けどこれも

あの公園を離れれば、

あのアパートから出れば

過去になる__。

 

そう思っていたんですが、

本当に怖かったのは

その後でした。

 

それから数日、

彼はずっと

右の足首が痛い

と言い、

 

妹さんは半狂乱になって

「足を掴まれたの!!
外に投げ出された!!
身体が浮き上ったんだよ!!!」

 

そんな……

嘘か夢みたいな事で、

連日真夜中に電話をして来る

ようになりました。

 

そんな話を2人から毎日

聞かされていた私は、

段々と苛立ちを覚えるように

なりました。

 

電話を受けるせいで

寝不足になるし、

不思議とどうしようもなく

イライラするし……。

 

その晩も

妹さんの電話を受けた後で、

どうしようもなく

むしゃくしゃして……

 

枕を思いっきり

部屋の隅にある姿見に

投げつけたんです。

 

その時、

私は……

揺らぐ鏡の中に

私ではない女の人を

見ました。

 

セミロングの黒髪から覗く頬には

血がべっとりと付いていて__、

 

その血は今にも私の部屋の床に

滴り落ちそうになっていました。

 

一瞬後に私の目が

まばたきを思い出した時、

すでにその女性は消えていました。

 

その後もこの女性は

なぜか私の元から

離れようとせず__。

 

夜中ふと目を覚ました時に

足元でその女性がゆらゆらと

立ち上がり私に迫って来る

のを見た事もありました。

 

徐々に私の精神状態も

不安定になっていき、

白昼夢…とでも

言うんでしょうか。

 

昼夜を問わず私の側にある、

“あってはならない気配”

“執拗な視線”に晒され……

本当にどうにかなって

しまいそうでした。

 

その後、

限界を感じた私達は

あちこちつてを辿って

霊媒師さんに視てもらう事に

したんです。

 

霊媒師さんと話をしていく中で

彼の足の痛みは

嘘のように消えていき、

 

精神的に追い詰められていた私も

とても穏やかな気持ちになれたのが、

今でも不思議でなりません。

 

その後、

霊媒師さんに改めて詳しい話を

伺った所……

 

私達は、

当時付き合っていた人に
殺害された女性の霊に
憑かれてしまっていた

のだと教えて下さいました。

 

妹さんは

その女性に魅入られる形で

あのアパートに入居し、

 

私の彼は

自分を殺した男性の代わりとして

その女性に付きまとわれていたと。

 

……彼がしきりに

痛いと訴えていた右足には、

女性がしがみついていた

そうです__。

 

当の私は……もちろん、

自分を殺した男性の彼女として

敵意を向けられていた

との事でした。

 

これを聞いた時には、

ゾッとするを通り越して

全身が震えてしまったんですが……

私が一番息を呑んだのは__。

 

その殺害された女性が
見つかった場所が、
浴室だったらしい事
浴室の上のスペースに
遺棄されていた

のを発見したんだと

聞かされた時です。

 

初めてあの部屋に行った夜

私があの部屋の浴室で感じた

言い知れない恐怖は、

 

確かにそこに在った

怒りや恨み__、憎しみが

作り出した強い呪詛のようなもの

だったんです。

 

ちなみに__、

その部屋は霊道でもあった様で

何が起こってもおかしくない

危険な場所だとも

言っていました。

 

私は今、

公園にいた真っ黒い人や

アパートの女性は、

少なからず霊道の影響を
受けていたのではないか……

と、考えています。

 

もしかしたら……

女性を殺害した犯人も、

霊道を逝く暗く淀んだ
ナニかに抗う事が出来ずに
正気を失ってしまった

のかも知れない__、

そう思ってもいるんです。

 

私はもう二度と、

あんな思いは

したくありません。

 

__でもなぜか。

 

心の隅には……、

あの恐怖に

もう一度触れてみたい。

そう思っている自分も

いるんです__。

 

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▼結び

 

人間って本当に

理解出来ない生き物だよねぇ。

 

一生忘れられない様な

怖い思いをしたって

言うのにさ、

 

豪勢なトラウマを

抱えっちまったって

いうのにさ……。

 

まだ欲しがるんだよ。

 

ずいぶん前にも話したけど、

人間の中には

“ヤツら”に魅入られて

自分から寄っていこう

とするモンがいるんだよ。

 

この女もそうさ。

 

もう二度と味わいたくない

なんて話しながら、

その目はどこか

楽しそうだった。

 

あぁ言うのは

病気みたいなモンなんだ。

 

欲しくてたまらなくなる__、

危ないかも知れないって

何となく分かってるのに……

手を出しちまう。

 

おや……まるで、

百物語を続ける

今のあんたの様じゃないかい__?

 

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※画像引用元
サンサンさんによる写真ACからの写真

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