【みんなで綴る百物語】~七の灯り~

企画
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ちょいと聞きたいんだがね……、

 

あんた、

“念”とか“恨み”みたいなもんを

信じるクチなんだろ?

 

それじゃあ、

“物の怪”なんかの類は

どうなんだい?

 

あんたがいた世界にゃぁ

……なんて言ったっけね、

 

水を満たした皿を

大事に頭に乗っけて、

水辺で生活している小僧がいるとか、

 

赤ん坊の声で泣き喚く、

バカみたいに重たい爺さんが

いるんだそうじゃないか。

 

あんたは……

そういうモンを

見た事があるのかい?

 

“ヤツら”とは違う……

“異形”をさ。

 

……今回は、

あんたの為に

ちょいと薄気味悪い話を

用意してやったよ__。

 

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▼《七の灯り》:近付く明かり

 

その頃僕は、

ちょっと事情があって

家族全員で祖父母の家に

身を寄せていました。

 

これは僕が小学校5年生……

位の時に体験した話です。

 

祖父母の家では、

僕と父が同じ部屋を使う事に

なったんですが、

 

その部屋は昔……

父が子供時代を過ごした部屋

でもありました。

 

少し埃っぽいような、

むず痒くなるような臭いがする

父の部屋には、

 

薄れた落書きの跡があったり

壁にキックの跡のような

歪なへこみがあったり……

 

いかにも

子供が生活していたと思える

思い出の印が数多く

残されていました。

 

荷解きの手を止めて

父の足跡を見渡しながら、

僕はなんの気なしに

窓に近付きました。

 

父が生まれ育った家は

高台に位置している為、

どの窓からでも

素晴らしい風景を眺める事が

出来たからです。

 

特に、

この部屋からしか

見る事の出来ない

バイパスや歩道橋…幹線道路は、

あの頃の僕の

密かなお気に入りでした。

 

……でも、

もしかしたら__、

“あの時は”

カーテンを越えて溢れて来た

真っ赤な夕陽に

吸い寄せられていた

のかも知れません。

 

(開けてみよう。)

 

そう思った僕が薄手のカーテンに

手を掛けた瞬間、

僕の背後から太い腕が

素早く差し出されました。

 

父の手はそのまま

乱暴にカーテンを掴み、

カーテンの隙間が作り出した

細い夕陽の糸をあっという間に

消し去ってしまいました。

 

穏やかな父には珍しい

強引なやり方に驚きつつも

不満を抱いた僕は、

父の顔を見上げ文句を言おうと

口を開きかけました。

 

「いいか__。」

 

外が暗くなってきたら、
この部屋の窓とカーテンは
絶対に開けてはダメだ
もちろん覗くのもダメだ。」

 

その時の父の顔からは、

子供でも分かる程の

不安や怯えが見て取れました。

 

「……どうして?」

 

恐る恐る聞き返しましたが、

案の定……

父は口を開きませんでした。

 

子供心に

《これ以上は

聞いちゃいけない事だ》

そう感じた僕は、

黙って窓から離れました。

 

それからしばらくは

父との約束を守り、

 

この部屋の窓は

明るいうちにきちんと閉め、

隙間が出来ないように

カーテンをきつく合わせるように

していました。

 

そんなある日の午後、

僕は学校から帰って来て

大好きなバトルアニメを

見ていました。

 

地球を滅ぼそうと

襲ってくる強敵を前に、

毎回傷だらけになりながら

立ち向かっていく主人公に

すっかり夢中になり……

 

僕はあの約束を、

忘れてしまったんです。

 

その時……外はすでに

薄暗くなっていました。

 

窓の向こうに広がる暗闇と

向き合った時……どうしてか、

少し心臓が跳ねた気が

しました。

 

1秒でも早く、
窓を…カーテンを閉めよう

 

無性に不安になった僕は、

勢いよくカーテンを捕まえ

閉めようとしました。

 

外を見る気なんてなかった。

ナニかを探す気なんて、
欠片もなかった。

 

でも、

僕は見てしまった

 

眼下に見えるバイパス……

そこにかけられた

歩道橋を__。

 

歩道橋の明かりは

もう点いていて、

まるでその場所を

僕に知らせてくれている

かのようでした。

 

(__あれ?

あそこの明かり…?)

 

僕は知っていました。

 

ここに住む前から、

その歩道橋を通った先にある

コンビニがお気に入り

だったから。

 

そのコンビニには、

僕が大好きなあのアニメの

カードが入ったチョコが

売っていて、

いつも頭上の明かりの数を

数えながら渡っていた

から……。

 

明かりの数は

4つ。

 

でも、今は5つ。

 

僕の心臓がまた大きく

飛び跳ねました。

 

(カーテンを

閉めなくちゃ__。)

 

そうは思っているのに、

身体が全く言う事を聞いて

くれませんでした。

 

僕は、

あるはずのない

5つ目の明かりから

目を逸らす事が

出来なくなりました。

 

すると、

不思議な事に

気付いたんです。

 

(あれ?動いてる……?)

 

何度かまばたきを

しているうちに、

その不思議は恐怖へと

変わりました。

 

ゆらゆらと揺れながら…

明かりだと思っていたモノが

動き出していたんです。

 

歩道橋の奥で

チラチラとしていた

はずの明かりが、

今は歩道橋を渡り終え

階段に差しかかろうと

しています。

 

その明かりの高さは、

歩道橋の灯りと同じくらい。

 

高さからいって

人が手に持つライトでは

ありません。

 

「あれ、なんだ?」

 

そう小さくつぶやいた時、

庭で飼っている犬が

勢い良く吠え始めました。

 

一瞬驚きはしましたが、

その声は家族を迎える時の声

だったので、

ほっと息をつき__、

 

僕はカーテンを開けたまま

階下へと降りていきました。

 

帰ってきたのが父だと知った僕は、

急いで今見た事を話しました。

 

すると父は血相を変えて

2階へと走り出し、

窓に飛び付いたかと思うと、

引き千切れそうな位の強さで

カーテンを閉めたんです。

 

『見たのか……?』

 

その問いが意味するものが

あの明かりなんだ

何となく気付いた僕は、

正直に頷きました。

 

すると父は、

大きくため息をつき

吐き出すように言いました。

 

「明日からは必ず16時に

カーテンを閉めるんだ」

 

「ねぇ、父さん。

あれ……なんなの?」

 

「………父さんも、

17の時に“アレ”を

見た事がある。

 

あの揺れるような光な、

明かりじゃない__、

顔なんだ。

 

顔が光ってるんだ。

 

ゆらゆら揺れているように

見えるのは、

“アレ”の髪が

なびいているからだ。

 

街灯みたいに見えるのは、

“アレ”の首が恐ろしく長い

からなんだ。

 

あいつは、

自分を見ている奴の居場所が

分かるんだろう。

 

見ていると、

どんどん近付いてくる。

 

……だから、

窓を閉めろと、

カーテンを閉めろと

言ったんだ。」

 

「ねぇ……今、

父さんはそいつを見たの?」

 

その問いに、

父はしばらく黙り込みました。

 

そして、

絞り出すように言ったんです。

 

『坂を下った所の

信号機の横にいた』

 

父が言った“アレ”は、

僕の住む家のすぐそばまで

迫って来ていたんです__。

 

その後は、

僕も父も自然とその話題を

避けるようになりました。

 

そして、数カ月後……

僕たち家族は祖父母の家を

離れる事になりました。

 

僕は祖父母に別れを告げた後、

父が運転する車の窓から

あの歩道橋を眺めました。

 

昼間の歩道橋は

明るく賑やかで……

全く別の場所のように

思えました。

 

明かりは4つ……。

 

“アレ”が今も

夜な夜なあの場所に

立っているのか__、

それは僕にも

分かりません。

 

ただ……

今でもふと、

怖いと思う時が

あります。

 

家の襖を開けたら__、

ドアを開けたら__、

カーテンを開けたら。

 

“アレ”の姿を

見つけてしまいそうな

気がして__。

 

 

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▼結び

 

あたしはね…

この話に出てくる

“首の長いアレ”ってのは、

 

『ろくろ首』

って物の怪なんじゃないか

と思うんだよ。

 

アレは

誰かを待ってるのかね。

 

結った髪もほどけちまって

整える事もせずに、

自分に気付いてくれる人を

待ってるのかも知れないね。

 

物の怪は、

身体を失った“念”だけの

ヤツらとは違う。

 

物の怪の類は、

生きている身体を持って

死する事も出来ずに……、

 

時代の流れに取り残されて

人間に限りなく近い感情の中で

生きている__……

らしいからね、

 

実は寂しいのかも

知れないよ。

 

歩道橋なんて大層なもんが

出来ちまって、

 

自分の姿を見てくれる……

自分に気が付いてくれる人間が

減っちまったんじゃないかね。

 

だから、

自分を見つけてくれた目を

人間を追っちまうんじゃ

ないのかねぇ。

 

なんだか寂しい話だと

思わないかい?

 

もしかしたら__、

なびいた漆色の髪の奥で

綺麗な瞳から

涙を流しているかも

知れないねぇ。

 

【誰か…私に…気付いて】

ってさ。

 

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※画像引用元
サンサンさんによる写真ACからの写真

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