【みんなで綴る百物語】~伍の灯り~

企画
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生きるって、

本当に大変な事だ。

 

時の流れってのは、

笑っちまう位に残酷

だからね。

 

まぁ

ここにいるあたしにゃ

関係のない事なんだけど、

 

ここに紛れこむ人間達と

話してるとさ、

本当に気が重くなる時が

あるんだよ__。

 

自分まで闇に喰われちまう

んじゃないかって、

怖くなる時があるのさ。

 

そんな時、

あたしはある娘の事を

思い出すんだ。

 

この暗くて落ち着かない座敷と

濁ったあたしの魂を、

あっという間にあったかいモンで

包み込んでくれたあの娘は、

 

まっすぐで淀みのない

眼差しをしてた。

 

今日は

あたしの気まぐれに、

ひとつ泣ける話を

してやろうじゃないか。

 

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▼《伍の灯り》:窓越しの想い

 

 

私はおばあちゃんが

大好きでした。

 

もう2度と

会う事が出来ない今も、

もちろんこれからもずっと。

 

その思いは永遠に

変わらないと言い切れます。

 

だからこそ

あの日の出来事を……

私は死ぬまで忘れる事が

出来ないでしょう__。

 

私が不思議な体験をしたのは、

小学校高学年位の頃だったと

記憶しています。

 

その日、

私は塾に行く為に

一人でバスに乗って窓の外を

ぼんやりと眺めていました。

 

バス停ごとに止まっては

走り出す__、

 

バス特有のゆったりした揺れに

促された私が、

ゆっくりと目を閉じようとした時、

次の停留所が見えてきました。

 

ですが、

バスはスピードを

緩める事無く進んで

いきます。

 

(ここで乗って来る人は
いないのかな…)

 

そう思った矢先、

私の目に停留所のベンチに

座っている人影が

映りました。

 

私は思わず前のめりになって、

窓の向こうに見えるバス停を

食い入るように見つめました。

 

(確かにいる……。)

 

ですが、

バスは停留所の数メートル前に

差しかかっても、

スピードを落とす事は

ありません。

 

(どうして
止まってあげないの!?)

 

私が一人戸惑っている間も、

バスは一向に止まる気配を

見せません。

 

そこで初めて

気が付きました。

 

“その人が私にしか
見えていない人”

なんだと。

 

そして、

スピードを維持したバスが

停留所に差しかかった時、

私は目の前の人影の正体に

目を疑いました。

 

そこに座っていたのは
私のおばあちゃんだった

んです。

 

私の大好きな

おばあちゃん。

 

私にしか見えない__、

 

今は

一人で歩く事すら

出来ないはずの__、

 

施設に入っているはずの

おばあちゃん__。

 

__その日、

私が塾で習った事は

全く頭に入りませんでした。

 

塾の先生が授業の終わりを

告げると同時に、

私は鷲掴みにした教科書を

カバンに詰め込み、

急いで家に帰りました。

 

「お父さん!!」

「__どうした、
そんなに慌てて。」

「……さっき……、
バス停でおばあちゃんを見た!!
ベンチに一人で座ってた!!」

 

瞬間的になんとなく

言わない方がいい気がして、

『私にしか見えていなかった』

という事は言わずに

話をしましたが、

 

それでも父は

私の必死の訴えを

真面目に取り合っては

くれませんでした。

 

一人では歩く事も出来ない

おばあちゃんが、

施設を出て一人で

バスを待っているなんて

絶対にあり得ない事だと。

 

父の言う事はもっともで、

反論の余地など

ありませんでした。

 

でもあの人は、

確かにおばあちゃんだった__。

 

私が見間違える訳がない……
絶対におばあちゃんだった…!!

 

私はその想いを

どうしても拭う事が

出来ませんでした。

 

そしてひとり静かに

悟ったんです。

 

あれは

お婆ちゃんの生き霊

みたいなもの

だったんだと__。

 

きっと、

私たち家族が暮らす家に

帰りたくて、

一人でバスを待っていたんだと__。

 

毎日のように

“あたしは元気が取り柄”

そんな風に話してくれていた

おばあちゃん。

 

いつの間にか

穏やかに笑いかける

物静かなおばあちゃんになった、

私の大好きなおばあちゃん。

 

段々と一人で自由に

歩き回る事も

出来なくなっていき、

 

いつも座っていた

座椅子だけを残して

私達の家に別れを告げた

おばあちゃん__。

 

(おばあちゃん……
家に帰りたかったんだ。

心と身体が離れちゃうほど…
寂しかったんだ…!!)

 

その日の晩、

私はひとり……

ベッドの中で声を殺して

泣きました。

 

泣き疲れて眠るまで

ずっとずっと、

おばあちゃんを想って

泣き続けました。

 

それからは、

会いに行く度に

お婆ちゃんの隣に座り

手を繋いで……、

沢山笑い合いました__。

 

これは、

少し怖くてとても素敵な__、

私の大切な想い出です。

 

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▼結び

 

形あるものは

いつか朽ちる時が来る。

 

それは絶対に避ける事が

出来ないもんだ。

 

生きてるモンは皆…

いつか必ず身体にも魂にも

限界が来る。

 

愚かなヤツは

その現実に蓋をしちまったり

わざと気付いてない振りを

したりしちまうが、

 

この話を聞かせてくれた娘は

そうじゃなかった。

 

変えられない現実と

愛するモンの強い想いを

なんとかして受け止めながら、

最期の時まで寄り添う事を

選んだんだ。

 

本当に強い子だったよ。

 

あの子が去っていく時に見せた

凛とした表情は、

今でも忘れられないねぇ。

 

あぁいう魂には

必ず光が宿る。

 

どんな場所に行っても、

自分が放つ光で

先に進む事が出来るんだ__。

 

あんたもいつか、

そんな人間になれるといいねぇ。

 

 

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※画像引用元
YOU_KAZさんによる写真ACからの写真

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