【皆で綴る百物語】~参の灯り~

企画
スポンサーリンク

 

「よっこらしょ…。」

 

なんだい、

怪訝そうな顔をしてさ。

 

なに…?

ろうそくが大きすぎや

しないかって?

 

…あたしはさ、

もうずぅっとここで

人間ってやつを見てきてるんだ。

 

だから分かる。

 

あんたみたいな目をした人間は、

この手の話に

めっぽう弱いんだってさ。

 

怖い怖い…そんな顔をしていながら、

その実…楽しくて仕方がない。

 

今までの話だって、

少しばかり物足りないと

思っていたんだろう?

 

次の話は長くなるからね、

覚悟してお聞きよ。

 

これから話すのは、

あたしがただ一人…

『いけ好かない』__。

そう思った若い女が語った

そら恐ろしい話さ。

 

スポンサーリンク

▼《参の灯り》:廃病院に棲みついたモノ

 

 

物心ついた頃から

形のないモノが存在している事が

当たり前になってしまうと、

『恐怖』を軽んじてしまう事が

あります。

 

特に小学生までの子供達は

善と悪の区別がつきにくい分、

少々無茶をしてしまう事も

多いのですよね。

 

私も例に漏れず、

無邪気な好奇心から

とんでもない場所へ

足を踏み入れてしまった事が

ありました。

 

私はまだ小学生だった頃、

友人4人と一緒に

近所でも有名な病院__、

すでに廃墟と化した建物へ

肝試しに出掛けた事が

あるのです。

 

その廃病院はごく普通の

住宅街の一角に位置していた為、

本来ならば周囲と変わらない

静かで落ち着いた雰囲気であるはず

でしたが…

 

なぜか病院の周囲にだけは

独特の…暗くて湿ったような__、

それでいて冷たいような雰囲気が

漂っていました。

 

私達5人は、

廃病院の前に立ち

その建物を見上げました。

 

「おれ…やっぱり行かない。」
「__ぼくも。」

 

廃病院を見上げながら、

そこにいた3人の男の子のうち

2人が中に入るのを拒みました。

 

「へぇ~、怖いんだ。」

気の強い女の子が

からかったのですが、

頑として2人はその場を

動こうとはしませんでした。

 

仕方なく、

私とその気の強い彼女と

男の子の3人で病院の中に入る事に

なったのですが…

 

歪んだ玄関はびくともせず、

仕方なく生い茂る雑草を

かき分けながら病院の裏へと進み、

勝手口の横にある大きな窓から

中へと忍び込む事になりました。

 

窓を越え病院独特のビニール床に

足をつけた時__、

 

急に…凍るような冷たさを

感じたのです。

 

外の気温は30度……

 

でも、

病院の中はまるで

冷蔵庫のようでした。

 

見渡すとそこは病院の設備と

台所やダイニングを兼ねている様な、

特殊な造りをしている部屋である事が

分かりました。

 

薬品や用途の分からない器具が

保管されている棚の横に、

ダイニングテーブルがあるのが

あまりにも不自然で、

薄気味悪かったのを

よく覚えています。

 

テーブルには1人分の食器が

用意されたまま__。

 

開いたままになっている

冷蔵庫の扉__。

 

中には食べ物が入ったまま

なっていました。

 

ガラス戸を隔てた隣の部屋……

診療所に当たる部分には、

 

診療器具やベッドなども

そのままの状態で

残されていました。

 

単純な子供だった当時の私達は、

思い出す事が出来ませんでした。

 

そこが“廃墟”であるという事を。

廃墟には生活感など、

絶対にあってはならない事を__。

 

恐怖と不安が勝ってしまって、

自分達の目の前に広がる光景が

異常である事に気付く事が

出来なかったのです。

 

そしてそのまま…

私達3人は、

悲鳴のような音を立てて軋む

狭い階段を上がり、

大きな和室の襖を開きました。

 

そこには布団が3組

整えられた状態で敷かれたままに

なっていました。

 

その光景は、

今もまだ誰かがここで
生活している__。

そうとしか思えない

ものでした。

 

言葉もなく歩き回っていた私達は、

何かに呼ばれるように、

とある部屋の前までやって来て

揃って足を止めました。

 

その部屋には、

中央に文机が……

その前に1組の布団が敷かれており、

机の上と布団の周りには

それぞれ手紙のようなものが

ばら撒かれていました。

 

私達がその様子に

あっけに取られている中で、

私ではないもう一人の女の子…

あの気の強い彼女が突然、

甲高い悲鳴を上げたのです。

 

彼女は部屋を飛び出しながら

振り向きざまにこう言いました。

 

「ナニかいる!!
今肩を叩かれた!!」

 

それを聞いて私と

もう一人の男の子も慌てて

入ってきた窓へと

走り出しました。

 

その後……

もつれ合う様に

飛び出してきた私達に、

外で待っていた2人の男の子が

遠慮がちに言いました。

 

「入る前…2階の窓に
女の子が立っているのが
見えたんだ。

だから怖くて入れなかった…。」

 

あの病院の2階で見た

手紙のようなものの

内容と意味を知ったのは、

ずいぶん大人に

なってからの事です。

 

あの……

手紙だと思っていた紙に

書かれていたのは…

“弔辞”でした。

 

 

スポンサーリンク

▼結び

 

病院はどこも大なり小なり、

問題を抱えているもんさ。

 

人間の死がついて

まわっちまうからねぇ。

 

特に古い病院は厄介だよ。

歴史が長ければ死人も多い__。

 

不運な患者が、

いつまでも助けを求めてたり

しちまうんだ。

 

自分が死んでいる事にも

気付かないでさ。

 

__で。

 

なんであたしがこの話をした女を

いけ好かなかったのかって?

 

あの女はここに来た時から

他の人間とは違ってたのさ。

 

このあたしに、

全部知っている様な顔をして

“面白い話を

いくつか聞かせてやるから、

ここから出る方法を教えろ”

なんて口を叩いたんだよ。

 

…まぁ、聞いた話に関しては

上物ばかりだったから、

文句を言い過ぎるのも

どうかと思うんだけどねぇ…。

 

それでも、

あの女の見透かす様な目は

今でも好きになれないよ。

 

……あんたにゃぁもう少し後で、

あの女が語った他の話も

してやるとしようか__。

 

☆募集中☆
本ブログのTwitterアカウントの
フォロワー100人達成を記念して、
皆さんから恐怖体験を募集しております♪
詳細はこちら↓↓

※画像引用元
YOU_KAZさんによる写真ACからの写真

コメント